「…先輩が…風邪…?」 「あんた知らなかったの?確かちょうど1週間くらい前から学校休んでるらしいよ」 さも当たり前のように言いカコン、と靴を床に置くキューピーに言葉が出なかった。 「わた、わたし知らなかったそんなの…」 1週間前って言ったらわたしの風邪が治りかけた頃でどういう訳か陽気に蟹に話かけてた頃だ。 知らなかった…。先輩が休んでるなんて…。てっきりわたしを嫌って姿を見せないんだとばかり。不謹慎にも少しばかり心の中でほっとした自分がいたからすぐにかきけした。嫌われた訳じゃなかった、でもそんなことより…なんで、どうして…! 複雑な顔をしているであろうわたしに気づいたのかキューピーが「あんたまさか」と言ってきた。 「そうなの…しらな」 「とうとう息の根を止めてきたのね」 「どうして、先輩のこと言ってくれなかったの!」 すごい真顔で恐ろしいことを述べるキューピーに思わず声が大きくなる。場所が場所だから周りにいる生徒がギョッとした顔でこちらを見るもそんなこと関係ない。 「言ったわよ」 「嘘!わたし聞いてない!」 「言ったっつってんだろ。あんた暢気に菓子食べてたじゃん」 「許してやろう」 暢気なわたしに後悔した。何やってんだわたし。しかし後悔してる暇もない。そう感じた。 「行かなきゃ…」 無意識の内に出た言葉。何故だかわたしは逸る気持ちのままにキューピーに「ごめん、行かなきゃ」とだけ残し、無我夢中で走りだした。 どこへ? なんて決まっている、先輩の家だ。だからキューピーが後ろで「いってらっしゃい」なんて言ってたのなんて知るよしもなかった。 → |