おどりくるいし 「南蛮菓子だ、食べてみよ」 これは毒なのだと、元親は思う。 元就がわざわざ自分のために取り寄せてわざわざ海を渡ってこちら側へ来てわざわざ、ざわざわ。 「どうした、旨いから早く食べてみよ」 「ああ、うん」 ざわざわ、心が拒絶している。 無理無理だって宿敵だし好意を向けられたことなんてなかったし何より南蛮菓子が怪しすぎる。こんな黄金の菓子は怪しい見るからに甘そうで美味しそうなのは明らかに毒が入っている証拠だ。 目の前で切り分けられて同じ南蛮菓子を頬張る元就も怪しい。きっとこの元就はからくりで毒なんて感じなくて、つまり元親はどこかに隠れている本物の元親に命を狙われている。 「甘さが絶妙で、貴様には良さが分からないかも知れぬな」 「そうか、はは…」 まあでも一口なら毒くらい平気だろう。ふわふわと優しい色合いが元親の心をそそる。 一口食べて、隠れている元就を満足させて、美味しくてももう食べないようにして、強い酒で胃を洗浄しよう。よし決めた。 「食べるぜ…!」 ふわふわはもそもそで、喉にぴったり張り付いて、元親は目を白黒させて、転げ回って、元就が「そんなに旨いか」と呆れていて、ああやっぱり毒なんだとそう思った。 |