2012 | ナノ

いわしかしまし


きびだんごを貰った。

「鬼退治には行かないよ?」
「竹中ちゃんが桃太郎でいいから」
「そういう問題じゃなくてさ」

鬼は鋭い目付きで佐助を睨んでいる。何があったかは知らないけれど、この分だと佐助が悪いようだ。

「わざわざきびだんごを買ってきたの?その労力を他に回せばいいのに」
「いや、うん、うん、まあね」

挙動の怪しい猿をとっちめると、鬼の眼帯にきびだんごを挟んだそうな。
何故って、幸村がそうやって遊んだ際に政宗は笑ってくれたそうだからだ。

「君、長曽我部くんとそんなに親密な仲だったっけ」
「テンションが上がっちゃって…、tensionが」
「政宗くん風に言い直したってどうにもならないよ」

鬼ヶ島はだんだん近付いてくる。島が動いたら学会ものだが、この孤島は腕を伸ばしたり足を動かしたりできる孤島である。
とうとう佐助の首に腕が回った。噴火寸前とはまさにこのことを言うのだろう。

「せめて豆にしておくべきだった」
「君には鰯の頭が必要なんじゃないかな」

鬼は外、をやろうにも、鬼は外へ佐助を連れ出してしまった。
福は内、入ってきたのは佐助の絶叫で、半兵衛はきびだんごを食べながら扉を閉めた。