(君のことすべて) 小さなからくりの箱をどこからか取り出し、大事そうに渡してくれた。この中に爆薬でも入っているかのようだ。 手の熱で湿った箱は軽く、握りしめたら簡単に壊れてしまいそうだった。 「あげる」 それから兵太夫は色々なことを教えてくれた。 幼い頃、町を散歩していたら、細工師がそれをくれたこと。忍術学園へ入学すると予言をしたこと。この箱を開けられるようになった時、何かが変わること。 「順番が逆だったけどね」 「順番?」 「箱を開けて、忍術学園に行くことにした」 からくりのことをもっと知りたくなって、自由の利く全寮制の学園へ入った。そこからはやりたい放題だ。 「三治郎も、開けたら何か変わるかもしれないね」 「どうかな、閉じこめられてしまうかもよ」 帰り道は山伏の道。右に曲がると忍者が終着。左は藪林で向こうが見えない。 三治郎は箱を閉まった。箱入りなんて勘弁だ、と思いながら。 |