お題 | ナノ

オール・アバウト・ユー


「今日は一日三郎の真似をしよう」
「そりゃあけったいな」

布団から起き上がったかとおもえばこれだ。他に言うことはないのか。例えば、おはよう、とか。
それから彼は完璧に「鉢屋三郎」を演じた。変装があまり上手でなくても、普段から不破雷蔵を借りているのだから構わない。

「今日は三郎が二人いるようだ」

八左ヱ門は頭を抱え、どちらと組むでもなく、一人で実習に行ってしまった。

「本当は雷蔵が二人、なのにな」

にこっと笑う瞳が揺らめく。
飲み込まれる、そう、感じた。