ワンチャンス、ワンキス 誰からでもいいのよ、なんて。わざわざ女装してくださった山田先生を前にして、誰が勇気を出せるものか。 「乱太郎、お前行けよ」 「どうして私が」 「主人公だし」 「やだよ、きりちゃん、行ってよ。団子おごるから」 「だってよ、しんべヱ」 「ええー、お団子、唇…」 早くしろ、とのご達しだ。そろそろ行かないと、補習がどんどん長引いてしまう。 「じゃあじゃんけんにしよう」 「分かった、一回勝負な」 「最初はグー、じゃんけんぽん!」 とにかく最初は嫌だ。人工呼吸の補習で、助けるなら女性がいいだろう、だなんて口紅をめっためたに塗りたくった山田先生の唇に最初に触れるのだけは、勘弁願いたい。 |