お題 | ナノ

バスルームと憂鬱


「はあ」

わざとらしくついたため息は、わざとらしい白いもやに変わる。

「どうしたのかね、小松田くん」
「はあ」

通りでおかしいと思った。
一番風呂が大好きな学園長が、今日は一番最後でいいだなんて。

「手が止まっているぞ」
「はあい」

事務員は最後。どうせなら一緒に一番風呂が良かった。そうしたら湯がぬるいと文句を言われ、体を拭いて外へ出ることもなかっただろうに。
これから学園長の背中を擦り、風呂から出たら湯船を擦らなければならない。
そう思うと、具現化されたため息すら憎らしい。