お題 | ナノ

時計を止めて時を止める


梅雨がやってきた。温くなる風と共に、恵みが降る季節。

「ずっとこのままでいいのに」
「喜三太はそれでいいかもしれないけど、僕は嫌だな」

たくさんのなめくじがいる、季節。いや、かたつむりか。どちらでもあまり変わらない。
年中湿度が高いこの部屋の、最も最悪な季節。

「いい加減寝なよ」
「雲ばかりで、月の位置が見えないなあ」

せっかく作った日時計も、連日の雨で流されてしまった。
もしかしたら今は、真昼なのかもしれない。
それでも金吾は目をつむった。明日にはこのなめくじ群が外の紫陽花に移るよう、祈りながら。