お題 | ナノ

雨恋傘


カメ子を待っているわけではなかった。
そろそろ手紙が来るから、門の前で待っているだけだった。

「まあ、中在家様!」

それならば、あの牛車の音が聞こえた時、すぐに忍術学園の中へ入ってしまえば良かったのだ。
そうすれば、カメ子に見つかることもなく、また手紙を待っていられた。

「…濡れないよう、傘に入るといい」
「はい!」

本当は、手紙など待っていない。
しんべヱへの手紙を持った少女を、待っていた。