お題 | ナノ

とめどない物語に終止符を


「次は何の話をしようか」

怪士丸はこの時間が好きだった。
本を開かずに、物語が語られる時間。優しい声で、次の言葉を待つ時間。
難しい言い回しも、意味を説明しながら、必ず分かるように、元の物語が薄れないよう説明してくれる。

「ごめんね、明日から試験なんだ」

雷蔵を見上げ、一か月の試験を知る。
これからどれだけ大変なことがあるだろうか。雷蔵はいつもの、困ったように笑う顔を崩さない。

「帰ってきたら、また物語を読もうね。何の物語がいいかな…」
「僕、先輩のお話がいいです」

大変な、試験の話。本物の物語。
帰ってきたら、新しい物語を聞こう。