お題 | ナノ

ひらひらと寒空を舞う


「それ、来年分の?」
「ああ、そうだよ」

冬休みに帰省すると、見慣れた水色の装束が揺らめいていた。
夏の青空のような、柔らかな色。

「そっか、そういえば去年も染めたっけ」

伊助のそれは、冬の曇天のように霞んでしまった。
新しい水色に身を包んだ時、自分は何にでもなれる気がしていた。
願えば空を飛べる、望めば水の上を歩ける、そんな力を手に入れた気がしていた。

「お母さん、手伝うよ」
「あら、帰って早々悪いわねえ」

空を飛べないし水の上を歩くこともできない伊助は、来年の夢を精一杯掴み取る。
鮮やかな色に映える、無垢な夢を叶える手伝いをしたい。