お題 | ナノ

時を唄う


「あれって、いつでしたっけ」
「何だ」
「団蔵たちが書類を燃やしてしまった時」

ぱちん、ぱちん、そろばんが弾かれていく。一の位を上げ、十の位を上げ。春夏秋冬、関係なく。
きっと来年の今日も、同じようにしているのだろう。いや、学年が上がるから、そうはいかないか。

「あの時の先輩、格好良かったです」

三木ヱ門は手を止め、終わらない束に目をやる。
これが終わるまでは、先輩は卒業をしない。

「無駄口を叩いている暇があったら、手を動かせ」
「はい、すみません」

弾いたそろばんを元の状態に戻す。
団蔵と左吉は部屋の隅で眠り、左門は厠で行方不明。