ハノイの塔 金吾は、からくりが人にとって代わる世の中が来るのではないかと心配している。 「そうしたら、刀なんていらなくなる」 「そうかな」 日々の鍛錬は必要なくなる。こうやって刀を磨くこともなくなる。金吾の十年間なんて、そんなものだ。 しかし、そうではないと、兵太夫は笑う。 「からくりは、金吾には適わない」 汚い音を立てて回るからくりを、そっと弾いた。 くるくる、板張りの床を駆けていく。 「火縄銃でも巨大からくりでも、金吾なら倒せるよ」 「そうかな」 「絶対そうだね」 兵太夫は端で止まったからくりを拾い、振り向いて笑った。 「まあ、金吾を倒すからくりができたとしたら、それはきっと僕が作ったものだろうけど」 「言ったな」 |