振りむくな少年 数馬は九十八個目の蝋燭を消した。 あと、二つ。 数馬は、そろそろ話が尽きてきたので焦っている。 左門は、眠くて仕方ない。 三之助は、厠に用があってもぞもぞしている。 作兵衛は、足が痺れてしまった。 藤内は、明日の予習をしていないことに気がついた。 まずい。 「じゃあ、次は左門の番だよ」 「…左門?」 「………」 「さ、左門…?」 数馬は、話が尽きたのに左門に代わってもらえなくて焦っている。 左門は、寝ている。 三之助は、膀胱が破裂しそうだ。 作兵衛は、足が痺れて口がにやけてしまう。 藤内は、明日の予習をしていないので、左門の変化を好機と捉えた。 「あと二つで終わりなのに…」 「まさか…、破裂!」 「いや、呪いだ、左門は呪われた」 「そうだ、俺の足も呪われた」 ぎゃあぎゃあと好き勝手に左門のわき腹をつついたり厠へ駆け出そうとしたり予習のことを考えたり。 もちろん襖の向こうの変化にだって気がつかない。 「なあ、みんな」 甲高い叫び声と鼻提灯が割れる音、丑三つ時。 授業で分からないところがあった孫兵を襲ったのは、先生の説教だった。 |