哀色の花びら 桜前線を逆走して帰ってきたが、一歩間に合わなかった。散った花びらが、無残な道を作り上げている。 花見をしよう、とあれほど指切りをしたのに、団子を買い忘れ、桜も散ってしまった。 全く、弁解しようもない。 「鉢屋先輩、遅いです」 「待ちくたびれました」 散った桜の木の下に、見知った顔が二つ。 大きな風呂敷を敷いて待っている。 「柏餅で手を打ちましょう」 「少し早いこどもの日です」 晴れた空に鯉のぼりを踊らせ、三郎は人工の花びらを降らせる。 綺麗だろう、と言うと、そうですね、が重なった。 |