お題 | ナノ

忘れたいことをトランクにつめて


左吉の風呂敷の中から、98点の試験用紙が出てきた。
よほど不名誉なことらしい、わざわざ「次は満点」と朱書してある。

「それくらいで何だよ」

団蔵は風呂敷からぐちゃぐちゃの試験用紙を出して見せた。
7点、「字を綺麗に書けたで賞」。

「お前と一緒にするな」
「俺、これを父ちゃんに送ろうと思っているんだけど」
「父ちゃん泣くぞ」
「きっと、泣いて喜ぶだろうな」

団蔵の話を聞いていると、自分の悩みなどどうでもよくなってくる。
しかし次は必ず満点を取って、そうしたら父に手紙を書こう。