お題 | ナノ

死にたがり


「市と私の子供ができたら、嬉しくて死んでしまう」
「死ぬのか」
「いや、死にはしないが」
「死なないのか」
「死なないな」

長政は赤ん坊を抱き上げる仕草をして、たまらなくなって腕をぶんぶん振る。

「それでは死んでしまうぞ」
「誰がだ」
「お主と市殿のややが」
「何と不吉な」

長政は剣を持ち直し、家康を見た。
家康も睨み返し、赤ん坊と笑顔を夕日の向こうに追いやった。

「長政、お前と市のややを…」
「絶対に、やらん!」