お題 | ナノ

消えたまぼろし


オアシスを見た。
あと少しで腹一杯に水が飲める、そうすればまた歩いていける。

そして、ベッドから落ちた。

「長政様?起きたの…?」

先ほどボールがぶつかった顔面と、今落ちて打ち付けた腰が痛い。
痛いのは現実の証拠。
そういえば、バレーボールが飛んできてから記憶がない。

「今、何時だ」
「5時よ、もう授業は終わっちゃったわ」

オアシスを見た。
潤う果実を持って、水辺に女性が立っていた。

「済まないな、市」
「ううん」

傷みと手の温かさにほっと息をつく。
オアシスはここにあった。