お題 | ナノ

希望は捨てた


間抜けな妹だ、と思っているのだろう。
市は金色に輝くしゃれこうべを、兄のために持ち上げた。
長政様に心躍らせ、夢中になって、ぽっかりと風穴が空いた後も、まだ彼を探しているのだから。

「ねえ、長政様…?」

お兄様にとぷとぷと酒を注がれる、市の愛した人。
婚礼の時、こんなに呑めない、と困ったような顔をした、正直な人。

「長政様…、市とお喋りしましょう?」
「黙れ」

喉を鳴らし、少しの長政様が胃にたまる。
一日もあれば消えてしまう長政様が、今だけ風穴を埋めた。