掴んでも消えてしまう とびっきりのお洒落で蘭丸の心を掴まえようと思い、いつもの空色の服ではなく、桃色を選択してみた。 髪を解いて、女の子らしさを主張しようと思った。 きっとこれで、蘭丸もかわいいと思ってくれる、はずだった。 「お前…っ!」 蘭丸に会うため、ほんの少し敵さんにいなくなってもらうのはしょうがない。 上がった息で、蘭丸を見上げる。 どうして、そんなに怖がっているのか。 「どれだけ殺した!」 桃色は血の色ではなくて、髪は乱れたのではなくて、すべて蘭丸のためにお洒落した、といつきは言いたかった。 ほんの少し、本当にほんの少しだけ、いなくなってもらったけど、本当にそれだけなのに。 掴んだのは心ではなく、恐怖だった。 それももうじき消えてなくなる。 |