お題 | ナノ

それでも生きた


「独眼竜のみを見るのは止めよ」

膝を突き合わせ、信玄は幸村の頬に手をやった。
いつものように叩くのではなく、やさしく包み込む。

「何があっても、生きるのだ、幸村」

幸村はその温もりが嘘のように感じられた。
その瞳が幻のように感じられた。


目を開けると、そこは誰もいない戦場だった。