お題 | ナノ

お菓子の甘さに溶け込んだ、


「渡す前から泣くのは止めてくれないかな」

半兵衛はかすがのエプロンの裾を引き、呆気にとられたように呟いた。

「まだ作っている途中じゃないか」
「だって…」

もしも受け取ってくれなかったら、もしも美味しくできなかったら、もしも、もしも。
不安は一粒ずつチョコレートに消えていく。

「そうしたら、誰かが慰めてくれるよ」
「お前ではないのか」
「今慰めているんだから勘弁してくれ」

溶けていく甘いチョコレートに、ほんの少し、笑顔が混ざった。