お題 | ナノ

偶然って素敵ですね


信長を待って、会社の入り口に背を預ける。
あと五分で、信長は退社する。
白い息が、自動ドアの音を待つ。
あと、三分。

「おや、飽きもせずに」
「…光秀」

あと、二分。
彼はどうでもいい話をして、どうしても信長と帰るのを許すまいとする。
適当な返事の白い息を、ただ一度、信長のために使いたいだけなのに、今日もまた、いつの間にか自動ドアをくぐっていなくなってしまう。
ただ一度、偶然ですね、一緒に帰りませんか、と言いたいだけなのに。