お題 | ナノ

5番目のベガ


『今日は七夕の話をしましょう』

慶次はプラネタリウムの椅子を目一杯下げ、天を見上げた。
あれは白鳥座、あれは織り姫星、放送を聞かずとも分かるようになってしまった。

『ベガは全天の中で、五番目に明るい星です』

あれはベガ、あれはアルタイル。
太陽を指差し、慶次は呟く。

いつからかプラネタリウムの天井は破け、本物の空が姿を現すようになった。
慶次は晴れの日も雨の日も、放送を何回も何回も巻き戻し、教える人もいないのに星の勉強をする。

『見えるでしょうか、』

「そう、その星です」

しばらく雑音が続き、また明日、で締めくくられる放送を巻き戻し、慶次はプラネタリウムの椅子で眠る。