お題 | ナノ

星くずをちりばめて宇宙


幼い頃、兄が大切にしていた小瓶の蓋を開けてしまったことがあった。
その小瓶には星の砂が入っていて、きらきら宇宙が広がっていた。

「あの時、どうやって許してもらったのかしら」

市は修学旅行前、兄と大喧嘩をした。
理由は些細すぎてもう忘れてしまったけれど、兄と喧嘩をするのはあの時以来で、懐かしく、切ない。
沖縄は暑すぎて、きっと、すべてを思い出すには不適当な場所で。

「お兄様、あのね…」

涼しい尾張で、そっぽを向いている兄に、お土産の星の砂を渡そう。
そして、昔の話を少ししよう。