雨の匂いにつられたら 駅までの道のりがひどく遠く感じたので、初めて喫茶店へ寄った。 以前慶次が話していた店なので、安心して入ることができた。 「あれっ、長政じゃん」 「前田…!」 以前慶次が話していたということは、よく訪れるということ。 長政と市はホットコーヒーと紅茶を頼み、慶次の友人たちと相席をした。 「珍しいな、寄り道なんて」 「まさか降るなんて思わなかったのだ」 「市が折り畳み傘を忘れたからいけないの…」 わいわいと狭いテーブルいっぱいに、話し声と笑い声が溢れる。 本当は二人でゆったりとした時間を過ごしたかったが、たまにはこんな寄り道もいいものだ。 |