お題 | ナノ

恋愛未満な僕ら


慶次はそれを「図書館デート」と呼ぶけれど、長政と市は清く正しい高校生なので、あくまでデートとは認めない。

「長政様、この問題…」
「そこは先の公式を当てはめるのだ」

デートだと認めてしまったら、夕陽に混じる市の白い肌や、机に流れ落ちる美しい髪の毛や、向かい合わせのこの距離や、

「あ、解けたわ」

嬉しそうに微笑む不意の表情に、いちいち胸を高鳴らせるこの心に、陳腐な名前をつけなくてはならなくなる。
市に教えた、市が問題を解けた、これは正義で、何も後ろめたいことはない。

今日も清く正しく、図書館へ通う。