お題 | ナノ

優しさに二重まる


「あれ、かすが掃除当番だっけ」

長いホームルームもやっと終わり、軽い鞄を手に取ると、前の席の幼なじみは上げた椅子の上に鞄を置き、掃除用具入れへと向かっていた。

「いや、小太郎と代わった」
「お、優しいじゃん」
「優しいのは小太郎だ」

佐助は、箒を片手に隅から掃除を始める幼なじみの後をついて回る、もちろん掃除の手伝いをしないで。

「北条のじいさんを病院に連れていくらしい」
「ああ、それで」

じいさんは先日腰を悪くしたので、早く病院に連れていってやりたい、と小太郎はよく時間とにらめっこしていた。
今日から高体連で授業数が減るからちょうどいい、と思ったのだろう。

「全く、優しいなあ、俺様の幼なじみたちは」
「お前も少しは優しさを発揮したらどうだ」
「かすががごみ捨てじゃんけんに負けたら、一緒に持ってあげるよ」
「悪いが私は負けない」

ふん、と自信満々にじゃんけんに挑み、振り返り、ピースサイン。

「じゃ、小太郎とじいさんに会いに行きますか」
「何だかんだお前も優しいな」
「ははっ、かすが、今頃気付いたんだ」