お題 | ナノ

勘違いからすべて


小さい頃は、忍者になれると信じて疑わなかった。
誕生日には木の苗をもらって植えて、毎日毎日飽きずに飛び続けた。

「まだやってる?」

小太郎はカッターで鉛筆を削りながら頷く。
あと二本で終わる、暇をもて余した末の作業。

「かすがのは?」
「水をあげすぎて枯らした」
「土壌が悪かったのかな、俺様のも全然育たなくて、冬に枯れちゃった」

忍者ごっこは来年も続いたが、次にねだったのは刀だった。

「小太郎の木、今度見に行ってもいい?」
「……?」

ようやく全ての鉛筆を削り終え、小太郎は満足そうに顔を上げた、ら、話についていけなくなっていた。
佐助は何の話をしているのだろうか。

「小太郎が本当に毎日飛んでいたら、まさしく現代の忍者だな」
「俺様忍者になる夢、まだ諦めてないし」

もしかすると、この二人は幼い頃に植えた木の話をしているのだろうか。
だとしたら申し訳ないことに、小太郎の木も枯れてしまっている。
今はそこにホームセンターで買ってきた土を加え、新たに花を植えた。

花見で良ければ、お茶くらいなら出そう。