お題 | ナノ

始まりからの逃走


小十郎は捕らわれた牢の中で、竹中半兵衛が病死したと聞いた。

「貴様は自由だ」
「それは竹中半兵衛の望むところじゃねえはずだ」

わざわざ情報と鍵を持ってきたのは、日頃から竹中半兵衛が、彼のため、彼のため、と呟いていたその人だった。

「貴様を起用するのは、我の望むところではない」

一瞬、竹中半兵衛は何のために今まで動いてきた、と叫びそうになった。
それほどまでにこの男は、小さく臆病に見えた。

「俺はお前を殺しに行くが、文句はねえな」
「好きにするがいい」

鍵の開く音がした。
いやに冷たい、小さな音だった。