小さく息をして、溶ける 水族館にマグロはいないのか、とパンフレットを隅から隅まで眺めた政宗は、大きなため息をついた。 「つまらない見せ物しかねえな」 「んなことねえよ」 いつきは投げ捨てられたパンフレットから、イルカショーと全国イソギンチャク大集合を指さす。 写真のイソギンチャクに目がついたキャラクターが、こちらを向いて笑っていて、これにしなければよかった、と後悔した。 「楽しそうだべ」 「Ha!せめてクリオネがいねえとな」 「探してみなきゃ分かんねえよ」 「分かった分かった、いつき、行くぞ」 ぐい、と引かれた手首の脈が、どんどん速くなっていくのを感じる。 心臓が喉にあるみたいで、呼吸が苦しい。 パンフレットに隠して、小さく息をした。 |