お題 | ナノ

花散る香りの残り様


すみれは綺麗な白色だった。
池は埋め立てられ、石畳に変わっていた。
従兄は店を畳み、どこかへ行ってしまった。

「来年、また会いましょう」

林檎飴の屋台を探して、二人で歩いた幼い記憶が、まだ口の中に残っている。
甘い甘い林檎飴は、来年のための約束。

すみれの間に落ちていた線香花火の持ち手を拾い、池のあった、二人の残像へ投げた。