半月は忘れ水に冷え 林檎飴が好きだった。 晩ご飯に、と渡されたお駄賃を、射的と林檎飴に使って、隣の従兄によく笑われた。 会場から少し離れたところに小さな池があり、いつもそこで林檎飴を舐めたものだった。 今日のような、半月の晩に。 「埋め立てられた、という噂を聞きましたよ」 それが忘れられず、年甲斐もなく林檎飴を二つ買い、射的屋へ戻ると、射的屋は少し残念そうな顔で林檎飴を受け取った。 「そう、なの」 「それにしても帰蝶、また林檎飴ですか。あれほど怒られたというのに、懲りませんね」 「私はあなたが疲れていると思って…」 「ふふ、ありがとうございます」 昔を思い出したくて、林檎飴を買った。 久しぶりに林檎飴を舐める従兄は、昔の笑顔。 埋め立てられた池を、いつか見に行こう。 |