お題 | ナノ
墨がひとすじ
蘭丸は子供が撤収してからしばらく後に、射的屋の前を通った。
「蘭丸くん、心配したのよ」
「濃姫様こそ、迷子になったんじゃないかと心配したんですよ」
そう言いながら、蘭丸は瞳いっぱいに涙を溜め、今にも胸へ飛び込んできそうだった。
「帰蝶」
「…何かしら」
「私の言った通りだったでしょう」
からん、からん、鼻緒と絆創膏が擦れていく。
蘭丸と繋いだ手が熱い。
はぐれたり迷子になったりするのが怖いわけではない。
待ちぼうけ、が怖い。
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