お題 | ナノ

焦がれの白菫


射的屋の裏は薄暗く、打ち上げ花火の音だけが響いている。
ライターで先に火をつけ、じわじわと丸まっていく火の玉を無言で眺めた。

火の粉が広がっていくと、地面の美しさが気にかかる。

「すみれだったのね」
「さあ、知りません」
「何色かしら」

ふと身を乗り出し、色を確認しようと髪を横に流す。
忘れていた線香花火が小さな音を立てて、すみれの床に落下した。

「確か、白でしたよ」