宵闇、橙、線香花火 打ち上げ花火の特等席は、小高い山の上。 足が痛いので友達を誘って行って、と頼み込む。 「ここからは見えるかしら」 「さあ、見えなくても構いませんけどね」 射的屋に人が集まらないのは、射的に人気がないためではないだろう。 この薄い微笑みと人当たりの悪い態度が、子供に不安感を与えている。 それでも濃姫には見知った顔、今更不安や苛立ちというものを感じることはない。 「せっかくなら、見たかったわ」 「まあ、まあ。こちらで許してくださいよ」 射的屋は賞品の箱から薄い長方形を出し、それを破って小さな袋を取り出した。 「我々には線香花火くらいが、ちょうどいいのです」 |