お題 | ナノ

から傘回して下駄の音


「祭りなんて、いつ振りかしら」

蘭丸に手を引かれ、神社から伸びる賑やかな人波をかき分けていく。
綿菓子、林檎飴、たこ焼きや水風船、小さな頃の夢がいっぱいに詰まっている。
当たらないくじや切り抜けない型抜き、景品のないピンボールに子供が集まっては消えていく。

「濃姫様、こっちこっち」
「ちょっと待って…」

いくつもの頭の向こうから、蘭丸の声がする。
新しい下駄が、足に赤い跡をつけている。

「これを使いなさい」

売れない射的屋が、絆創膏を投げてきた。
残念賞は、飴玉一つ。
ならばこの絆創膏は何等賞なのだろう。