お題 | ナノ

扉の向こうの夢


一晩の酒宴で士気が向上した北条軍は、鉄壁の守りを築いているはずであった。
するすると突破されていく門の数々に、氏政は声をかけていく。

「風魔、頼む」

しわしわの手が、小太郎を包む。
守りを任せた時も、失敗して戻ってきた時も。

「もう大丈夫じゃ、風魔、ワシがおるからの」

攻め入ってきた敵の勢いから見るに、もうこちらに勝利の風は吹くことはないだろう。
ここまで奮闘してくれた忍の勇気を称え、手を握る。
と、探していた数珠がこぼれ落ちた。

「ああ、こんなところにあったのじゃな」

久しぶりのご先祖様の感触に、氏政は一度空を見上げた。
ご先祖様が見守ってくださっている。
今なら真っ直ぐ、二人、空へ行ける。