お題 | ナノ

残った光を集めて掬う


「見つからんのう」

直に夜が明ける。
山の端が明るくなっていくのが見え、氏政は眩しげにそれを見た。
昨日は満開だった桜も、少しずつ、桃色の絨毯へと姿を変えていく。

「諦めようかの」

小太郎はとっくに見つけていた。
特徴のない数珠は、今、小太郎の手の中にある。

「ご先祖様に頼るな、ということなのじゃろう」

氏政は重い腰を上げ、変わっていく天の果ての景色に身を委ねている。
小太郎は、手の中の数珠が熱くなっていくのを感じていた。