お題 | ナノ

ほのかに香る夜は花


満開の桜に囲まれ、酒宴は楽しげに回っている。
今、攻め落とそうとすれば、簡単すぎて手応えがないか、むしろ酔っ払いの不思議な抵抗力のせいで攻めあぐねてしまうか、のどちらかだろう。

「風魔、風魔」

お祭り騒ぎの渦の中心で、空になった壷を抱えた主が、一人の忍を呼んでいる。
酒がなくなった、と。

「おらぬのか、風魔」

今、攻め落とそうとすれば。
やはり小太郎には動作もないことなのだろう。
代わりの酒壷を用意しながら、心の不思議な抵抗力に怯えた。