お題 | ナノ

君のせいの煩悩


「煩悩は108つあるといわれておってな」

そんな話をしたのは、紅白の始まる前だろうか。
7時に年越し蕎麦を食べ、8時に風呂に入り、テレビをぼんやり観ている間に、じいさんはこたつを布団にしてしまっていた。

「除夜の鐘はそれをなくしてくれるんじゃよ」

煩悩とは、人間の心身につきまとって悩ます、全ての欲望のこと。
小太郎は悩んでいた。
このじいさんを起こすか起こさないか、布団に運ぶかここで寝せておくか。
一緒に新しい年の始まりを祝うか、どうするか。