お題 | ナノ

その笑顔をフィルムに閉じこめて


「いいfaceだな」
「ははは、ども」
「どうしてこれにしねえんだ」

現像した写真を並べ、あそこがブレているだの、地平線が斜めだの、光が気に入らないだのと言っては右隅に投げていく。
政宗は、佐助がこっそりその中に投げてしまった写真を拾い上げ、perfectだ、と呟いた。

「被写体に許可取ってないし」
「俺が取ってくる」
「いいよ、とにかくこれは使わないの。伊達ちゃん、これ、俺様の著作権!」

政宗から写真を取り上げ、二度と混ざらないよう胸ポケットに入れる。
政宗はつまらなそうに立ち上がり、クラスの方へ戻ってしまった。

文化祭の展示用のフィルムのまま撮ってしまった一枚は、恋する乙女の熱視線。

「残念ながら、俺様に向けてじゃないけど」

胸ポケットから動悸が伝わったら、こっちを向いてくれるだろうか。
しがないカメラマンには、写真の中の人間をこちらに向かせることもできない。