全部うそだって 野球の試合もサッカーの試合もバスケの試合もバレーの試合も陸上の大会もラグビーの試合も全部同じ日に行われるなんて、冗談に決まっている。 「慶次、今日は我とボウリングに行く約束をしていたではないか」 その上まだあるなんて、夢なら覚めてくれ。 「後先考えず何でも承諾するからだよ」 「た、助けてくれ、半兵衛…」 「しょうがないなあ」 半兵衛は手を叩き、野球の勧誘とサッカーの勧誘とバスケの勧誘とバレーの勧誘と陸上の勧誘とラグビーの勧誘に合図した。 「慶次くんはこの通り反省している。許してやってくれないか」 教室に押し寄せた人波が引いていく。 半兵衛の手は神の手だ、困った時は頼りにしよう。 「はあ、助かった」 「懲りたかい」 「ああ、しばらくは何も受け付けないことにする」 「そうしてほしいものだね。じゃあ慶次くん、秀吉とボウリングに行きたまえ」 この人波の騒動は、秀吉と慶次をボウリングに行かせるための、半兵衛の嘘だ。 慶次はボウリングの七投目でそれに気付いたが、何もなかったかのようにボールを投げた。 |