お題 | ナノ

(日) 恥ずかし気に笑う君


「一週間楽しかった」

部屋に上がった途端に、佐助は心からの感情を語った。

「でももういいや」
「…どういうことだ」
「かすがは、楽しくなさそうだから」

恋人らしくなんてもってのほか、いつも通りですらいられない。
謙信先生を見ることもできず、放課後は拘束され、おまけにまずい弁当を二人分用意しなければならなかった。

「大変だったでしょ、彼女役。だから、もういいよ」

佐助は嘘が上手い。
今まで一緒にいて、佐助の嘘を見破れたことは数回しかない。
でも、これは、明らかに嘘だ。
もういい、なんて、そんな悲しい顔で言わないでほしい。

「…つくづくお前は自分勝手な奴だな」

一週間の約束だから、と理由をつけて、佐助の彼女になった。
嫌いだったり面倒だったら、引き受けるはずがない。
これを機に友達から一歩抜け出せるかもしれない、と思ったのはかすがも同じ。

俯いた佐助の胸に押しつけたのは、誕生日のプレゼント。
一週間の約束を持ちかけられる前に用意した時計と、手作りのケーキ。

「私は今からここでやけ食いをするから、食べたかったらフォークを持ってこい」
「かすが…」
「私の意思で、今日は一緒にいてやる」

佐助は、今までに見たことのない表情で笑った。