お題 | ナノ

犯人は決まっているので


「そんなことはどうでもいいんですよ」

雪崩をかき分けて、光秀は元就の肩を揺さぶった。
折れ曲がったり踏まれたりした問題集を配ることは、もうできないだろう。

「帰蝶にコーヒーのお礼を言ってきなさい、迅速に、そしてまたコーヒーを入れてもらうのです」
「し、承知した」

あまりにも光秀が真っ直ぐ見つめてくるので、元就は頷くことしかできない。
焼くなり煮るなり好きにされるはずだった元就は、今やコーヒーの給仕係である。

保健室を出て、職員室へ向かう。
国語科で固まる机の中に、昨日コーヒーを渡した女性を見つけた。

「あら、どうかしたの?」

コーヒーのお礼と新たなコーヒーと、ああ、面倒くさい。

「保健医が明日の古典の副教材を荒らしている」