お題 | ナノ

くり返しくり返し


「吹雪の中、長政様を探して、どこまでも行くの、何度も、何度も…そういう夢を見るの」

くるくる回る手を休め、市は顔を上げる。
蒼白なのは雪のせいか、別の何かか。

「馬鹿馬鹿しい」
「そうね、でも、怖くて…家を出たら、吹雪に隠れて、長政様がいなくなっちゃうんじゃないかって…」
「本当に愚かだな、市!」

点滴のない方の手を必死に伸ばし、オルゴールをひったくり、ベッドの中に隠してしまう。
市の手は冷たかった。
冷たい手を、熱を持った手で包み込んだ。

「手を繋げば、離れることはない」

吹雪の中、毎朝通った道を思い出す。
一人では寒く、拷問のような道だった。

「…そうね」
「では、学校に行こうではないか」
「あの、長政様」
「何だ、医者が止めても私は行くぞ」
「そうじゃなくて」
「市がせっかく家から出られたのだからな」
「長政様…今日は土曜よ」