そうして残ったのは愛でした 信玄と佐助の話は、いつでも幸村のことだった。 佐助は幸村に仕えているのではなく、信玄に仕えているのだが、その信玄が幸村の話ばかりするのだから仕方ない、と思って幸村の話をし、幸村の世話をする。 信玄といるより、幸村といる時間の方が長くなってしまった。 信玄は幸村の成長を佐助目線から眺める。 無邪気な姿を眺める。 「何の話をしようかの」 「そう、ですね…」 久々に信玄と二人、膝を突き合わせた。 幸村といる時には全くない緊張感に、佐助は手を握りしめる。 同じように、信玄も手に力を入れているのが見えた。 「もう、話すことがなくなってしまったな」 「そう、ですね」 仲立ちの消えた二人は、いつまでも昔の話を引きずり出しては涙する。 明日も明後日も、いつまでも。 |