お題 | ナノ

うすい足音


見届けられるのは、二度目になるか。
消えていくのが足からなのは、幽霊か亡霊だからだろう。

「佐助っ、お前…!」

手はまだ握れる。
肩はまだ掴める。
だが、もう、隣には立てない。

「やだなあ、伊達ちゃん。アンタも同じだよ」

大学は講義中で、誰も周りを通らない。
別れはまだ太陽の高い時間、明るい紅が照らしている。

「慶ちゃん、ごめん、俺様たち、先に行くね」
「ああ、俺はもうちょっとこっちを満喫してから向かうわ」
「ははっ、最後までらしいね!」

さよならの手を振る。
透明に変わっていく手の向こうに、三途の川が浮かんだ。