お題 | ナノ

夢だと知った


「そんな気はしていたよ」

講義を抜け出し、慶次に全てを伝えると、慶次は動揺した素振りも見せず、文明が産み出した小型の通信機をいじってみせた。

「みんなないんだよね、データ」
「存在しないってこと?」
「多分ね」

抜いた電池パックが熱い。
深い蒼色の携帯電話はアパートに置いてある。

「手前はどうして残っていやがる」
「水先案内人なんじゃないかな、俺」

慶次は笑う。
その笑顔が見たいわけじゃない、と駄々をこねても仕方ない。