お題 | ナノ

うそをはくひと


前は庭だった駐車場から、真っ直ぐに大学へ向かう。
途中で小十郎の家の前を通ったが、人が住んでいるようには見えなかった。

「真田に連絡してみたか」
「ううん、携帯の電池が切れてて」
「クソッ、どこかで充電するか」
「いいよいいよ、それより早く、着く方がいい」

佐助は携帯を握りしめた。
電池パックは尻ポケットに突っ込んで、蒼の好意に情けない笑顔を返す。

電話に出なかったら。
それが、一番恐ろしい。